あの時も、これからも
本当は行く気のなかった新婚旅行も、園田や医局長、莉彩等に追い出されるように海外に飛んだ

これが初めての二人だけの旅行だと旅先ではたと気が付き、笑いあったのはすでにいい思い出だ

そしてそれから数か月後

妊娠が発覚し、結婚しても「立花」で通していた医局に別れを告げた

そして今年の桜舞う3月

黒崎病院に設けられた特別室の一室でしるふは、柔らかな小さな命を抱いた

それから8か月余り

日々成長していく愛娘に微笑みながら、

海斗は副医院長あるいは医者としての仕事を、しるふは自宅で家事等をする毎日だ

最初は、それまで医局に行けばいやでも顔を合わせた海斗と会えないことに戸惑ったこともあった

でも、たとえどんな状況でもこの想いは変わらない

それは海斗だって同じだ

だから信じてる

二人で掴もうと、海斗が掴みたいと言った未来を、今を

そして、向けられる瞳を言葉を、温もりを

これからだって

ずっと、ずっと

信じている
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