あの時も、これからも
海斗に迷惑をかけたからというのもある、でも弟だから

姉として海斗の幸せを願っている

医者という道を選んだ海斗はきっと自分が思っている以上につらい状況にある

いらん期待を押し付けられて下心丸出しの令嬢に囲まれ

海斗が息をつける時はあるとしたらそれはきっとしるふといる時

それが痛いほど伝わってきたから手に取るようにわかったから

海斗としるふにはずっと一緒にいてほしい

3年付き合っていると聞いていたからそろそろ結婚かーとかって軽く思っていたのに…!

あのバカめ

あろうことかしるふを残してドイツに単身留学しおった

普通男ならそこでプロポーズしないか!?

しるふを連れて行かないか!?

「これで違う女作ったなんて言ったら殴り飛ばしてやる…!」

理解のできなささから回想が憎らしさに変化した沙希は、ひとりこぶしを握る

そんな沙希に苦笑をした信次は静かに口を開く

「帰ってきたら黒崎病院を継ぐ。だから日本に帰ってこなきゃいけない。そのためにしるふは置いて行く。あいつから医者を取り上げるつもりもないし、しるふが真っ白でいるためには黒崎病院にいるのが一番だから、そう海斗が言って行ったよ」

信次のもとを静かな瞳で訪れた海斗が、淡々と告げた言葉

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