あの時も、これからも
「少しは慣れた?」

海斗だってしるふが声を聞きたいから電話したことくらいお見通しだ

でもしるふがそれを言うことはないということも

それくらいの意地っ張りであることくらい海斗はよく知っている

「まあ、なんとか。建造物とか観光にはもってこいのとこだけどな」

「ドイツだもんねー。いいなー、一回行きたいなー」

「無料の宿なら提供するけど?」

海斗の冗談交じりの声にしるふは笑みを宿す

「そうだね、行くとしたら海斗がそっちにいる時がいいよね。安心して寝れるところがあるって重要だし」

しかも無料

そしたら会えるね

その言葉は胸にしまい込む

まだ大丈夫

海斗に会わないとあのぬくもりを感じないといけないほど自分は追い込まれていない

「園ちゃんたちね、また喧嘩したみたいだよ」

報告がてら笑い声とともに話すしるふに海斗のため息が聞こえる

「もういいよ、あいつらは。そういいつつそのうち仲直りするんだろう?」

園田と知り合ったのはそんなに前ではないのに二人の喧嘩話を聞いたのはいったい何度目だろう



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