あの時も、これからも
最初は真面目に聞いてやっていたが、そろそろ面倒くさくなってきた

どうせただのグチで別れる気などさらさらないのだから

「たぶんね、いつもそうだし。今回もなんだかんだ言いながらころっと機嫌直すんじゃない?」

海斗の面倒くさそうな声に微笑みながらしるふは、園田の怒った顔を思い出す

だぶん二年前の自分たちはあんな感じだった

ちょっとしたことでいじけて(主にしるふが)意地を張って、でも結局のところ仲直りしてしまうのだ

その度にお互いを知って

「それと雪ねーに海斗がドイツに行ったよ、っていったらなんでついて行かなかったの!って怒られた」

私が悪いんじゃないのにさー

ふと口をとがらせるしるふに海斗がああ、と思い出したようにつぶやく

「俺もこの間姉貴から脅迫メールの後にすごい剣幕で電話来たな」

あれは取っておいてよかった

そうじゃなかったら火に油を注ぐことになっただろう

「沙希さんなんて?」

「開口一番ばかと怒鳴られ、4年も付き合った彼女を置いて留学するとはどういう精神だ、今すぐ戻ってこいっていう無茶苦茶な電話」

海斗のため息交じりの言葉にしるふは苦笑する

海斗としるふだって一年が長いことリスクがあることはよくわかっている

でも周りはどうやら本人たちよりもこの事態を重く見ているらしい
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