あの時も、これからも
「それは知ってた」

だてにこの業界で生きてはいない

相手がどんな思惑を持って近づいてきたのかくらいは、なんとなくわかる

「あら、何気に鋭い。言ってくれればいいのに。嫌じゃない?私はあなたを疑ってかかってたのよ?」

「話しかけてきたのはいつも春日部の方だろう?」

「そう…だったわね。でも、無視してくれたっていいのに」

「そしたらしたで、春日部にとっては収穫だろう?それはおもしろくないしな」

春日部がきれいな眉を小さく寄せる

「それに、春日部みたいな後腐れない奴は、結構好きだからな」

そう言い残して海斗は食事の済んだトレイをもって去っていく

その背に視線を送りながら

「そういうあなたは、やっぱり罪な男ね、黒崎君」

ぼそっとつぶやいた桃花は、あれではそこそこに女が寄っていくのもわかるかもしれない、と小さく息をついた
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