あの時も、これからも
「わかってるって」

「じゃあなんで!!」

「園田と一緒に止めただろう?しかもあいつも止まっただろう?」

海斗の落ち着き払った声に、莉彩はふと肩を落とす

「黒崎先生、しるふが止まることわかって放っておいたんですか」

「当たり前だろう。俺が止めたって暇だのなんだの言って聞きやしないだろうし、あれも本気じゃないさ」

思いついたことを口にしてみただけだって

あの意外とロマンチストのしるふが、作られた出会いの場なんぞに本気で行くとは思えない

行ったとしても一回だけだ

しかもきっとつまんないとか言ってすぐに帰ってくるのだ

そして海斗に「つまんなかったの」とでも報告して終わりだ

「しるふに目をつける輩がいるかも知れないじゃないですか」

その場合は考えなかったんでしょうか

「しらふのしるふを口説き落とせる男はそう多くない」

確かに

しるふはかわいく見えて、意外とそこらへんすっぱり切る

ナンパされても相手の話を中断して「ごめんなさーい」とか作り笑顔で告げて去るのだ

あの後で「どの面下げて私をくどいんのよ」とまで言ってしまう

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