あの時も、これからも
「しるふ」

自宅でおつまみを突きつつ、缶ビールをちょびちょび飲んでいたしるふは、背後から名を呼ばれて顔を向ける

風呂から上がった海斗の静かな瞳を見て

ああ、これは何かを決心した時の目だな、とぼんやり思う

最近、海斗は何かを考える風情を見せることが多かったし

医局長や医院長と話をしていることも多かった

しるふは特に何も聞いていないし聞かされていないけれど、きっと海斗が海斗自身の中で結論を出したら真っ先に言ってくれるだろうから何も言わなかった

海斗はいつもそうだ

いつもいつも自分で抱え込んで、それでも自分で解決してしまうのだ

もう少し頼ってほしいし相談だってしてほしいと思うけれど、きっと自分なりの考えをきちんと持っている海斗が相談した時はもう海斗の中で心は決まっているときなのだ

だからしるふはただどーんとかまえて海斗が話してくれるのを待つことにした

その時、わかったとそれを受け入れたり、いやだったら反論したり

海斗はいつだって最初に自分に言ってくれるから

いつだって自分のことを一番に考えて、それで結論を出してくれるから

海斗と付き合うにはそれくらいの腹の座りが必要だと、付き合って2年位した時に確信した

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