あの時も、これからも

認識と我慢の夏3

ドイツにはベルリンの壁、イノシュヴァンシュタイン城、ケルン大聖堂等々歴史的、世界的に有名な建物がたくさんある

日本とは全く違う厳かな雰囲気の漂う街と行きかう人々がああ、外国なんだなと思わせる

日本との時差は7時間

来た当初は、七時間か…とよくわからない感傷にふけった

今までは日本でしか出張をしたことがなかったから時差なんて気にしたことがなかった

時間があるときに電話をすればよかったのに

突然発生した時差という壁に、今更ながらにそばにいないんだな、と感じてしまう

この道を選んだのは自分だから決して後悔はしていないけれど、どうしてもふとした瞬間にしるふを想わずにはいられない

医者という職業柄、突然の事故や病気で亡くなっていく人たちを、残される家族を見てきた

だから今ある日常が明日もあるとは限らないことくらいわかっている

けれど人間というものは大概いいように物事を考えようとして

ついついそのことを忘れてしまう

特にしるふは気が付くとそばにいた

病院でも休日でも

いないことは珍しくてその姿が視界に入らない日がここまで続くこともなかった

だからかもしれない

ドイツに来て、しるふのいた日常がいかに大切かを思い知らされた
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