あの時も、これからも
自室で医学書に目を走らせていた海斗は、机の上に置いた携帯がぶーと音を立てて振動したことに思考をいったん停止する

ディスプレイに表示された名を見て海斗の瞳が優しさをはらむ

分厚い医学書を、どこを読んでいたかわからなくならないように裏返しながら携帯を手に取る

音もなく画面に触れると表示されるのは、見慣れた名前とその文面

内容はたったの3行

しかも一文目は「やほー。生きてる?」だ

いつものことながらかわいげのない奴

そう思いながら苦笑する

何行かあけて続けざまに二文書かれている

「この間ね、元彼に会ったよー」

「どう?少しは不安になった?海斗君」だ

焼きもちを焼いてほしいことがバレバレで、不安にさせたいのならもう少し内容を充実させろ、と感想を抱く

だいたい不安になった?と書いている時点で後ろめたい気持ちはこれっぽちもないじゃないか

それをどう気にしろというんだ

そうそう嫉妬も焼きもちも焼かないことくらいお前が一番分かっているだろう、と返信ボタンを押して打ち込む

今日本は夏だ

早いものでドイツに来てからすでに4か月



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