あの時も、これからも
海斗の部屋に来ては、海斗が紅茶を入れているときに、ステレオの前に座って好きなアーティストのCDをかけていたしるふを思い出す

小さな澄んだ声で口ずさみながら、時々ふと海斗を振り返る

しるふはバッドエンドを嫌う達のくせに、よく聞いていたのは切ない歌詞のものばかりだった

「ここのフレーズが好きなの」

と、よく紅茶を入れ終わってしるふの隣に海斗が座るのを待っていましたとばかりに話し出す

その中に亡くなった恋人にあてた歌があった

バックはピアノの澄んだ音のみ

短い歌だけれど恋人が亡くなったことをその日常の違いから感じて、それでも記憶にあるその声を聴く

目をつぶればその姿が見えるから、だからそばにいてほしい

そううたっている曲

その曲を聞くたびに、しるふが切なそうに口ずさむたびに

ああ、こいつを置いては逝けないな、と心の中で思う

誰よりも大切な人を失うつらさを哀しさを知っているしるふを置いて逝くことだけはしてはいけないと痛感する

たとえ自分が居なくなった後だったとしてもしるふが泣くことだけは、それだけは絶対に嫌だと思うから

なんて考えているとまた携帯が震える

「ちょっと!!返信ないんだけど。まさか本気で浮気!?」

海斗からの返信がないことに痺れを切らしたしるふからだ
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