あの時も、これからも
最近、寂しいと思うことが多くなった

気が付くと海斗の部屋ではなく自分の部屋に帰っている

広すぎる海斗のマンションは、一人でいるとその広さを痛感してしまって

余計に寂しくなるし虚しくなる

フェンスに腕を乗せて、ぎゅっと白衣を握りしめる

どれだけ自分が海斗に助けられていたか

医者になって4年目に入るのにまだまだうまく患者の死を振りきれない自分が居る

残った想いが重なって胸に圧し掛かる

海斗がいればここまで息苦しいことはなかったのに

ただそばにいてくれるだけで

優しく頭を撫でてくれるだけで

不思議と立ち直れるのに

乗り越えられるのに

「………海斗」

そっと唇に乗せる名

その名を紡ぐこともめっきり減ってしまった

口に出せば、どうしても胸に燻ぶる思いを感じるから

「……っ」

逢いたい

決して口には出さないけれど、ずっとずっと胸にある想い
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