あの時も、これからも
「挿管チューブ!急いで!」

「輸液!」

「ライン取れる!?」

さまざまな声が処置室に行きかう

救急隊員の話では、歩道を歩いていたら暴走した車が突っ込んできたらしい

意識はなく、呼吸も浅い、出血だって見るからに多い

血圧も振れない

このままじゃ…

しるふの脳裏に朗らかに笑った桜の顔がよみがえる

焦燥感が広がるのを無視して

「開胸セット取って!」

処置室の奥の方に置かれた開胸セットを取るように指示を出す

看護師が開胸セットを取って走ってくる間に

処置室にピーという高い音が響く

心肺停止だ

「-っ」

全員が動きを止める

嫌な沈黙が、たった一音を除いて流れる

まだ脳の細胞が死滅を始めるまで3分ある

こういう時、海斗なら絶対にあきらめない

そう思い当たってしるふは一定のリズムでシンマを始める


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