もうすぐ夏なので怪談話でもおひとつ
祖母は肺炎をこじらせてしまい、そのまま亡くなりました。

もういよいよいけない、という頃でした。

最後の見舞いとなったその日。

わたしは、病室に入ることが出来ませんでした。

祖母は悲しそうでした。

入りたくても、わたしは怖くて入れなかったのです。


祖母の寝ているベッドを覆うように、黒い靄がかかっていました。

鳥が止まっていました。

黒い鳥で、松本零次氏が描かれる「トリさん」にそっくりでした。

マヌケな顔をしているくせに、やたらと恐ろしかったんです。


そうです、そいつは死神でした。

そのうちに、トリさんは気配を消して何処かへ行ってしまいました。

いや、消えたと思っただけで、本当はまだ居たんでしょう。

人間如きを欺くくらいはワケないことです。


わたしはようやく病室に入ることが出来て、祖母の見舞いができました。

それから一週間もたたないうちに、祖母は亡くなりました。
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