もうすぐ夏なので怪談話でもおひとつ
 いや、結論で言うと竜馬かどうかなんて解かんないけど。(笑


 今旦那、当時はカレシな男と寺田屋でデートしました。

 寺田屋というのは、伏見区にある史跡指定の建築です。

 坂本竜馬が襲撃された宿屋ですね。

 暗殺されたのは近江屋のほうで、こっちは危なく難を逃れたほう。

 後の妻、お龍と出会った宿です。


 さて、この日。

 カレシといつものごとくで京都へデートへ行ってました。

 カレシは大の竜馬ファンです。

 デートコースは京都が多く、霊山歴史館と墓地を巡り、その日は寺田屋も見学するというコースでした。

 え? そんな男、嫌だ? ごもっとも。(笑)


 わたしは別段、デートコースにコダワリもなく楽しんで見学しておりました。

 寺田屋へまず行ったんです。

 寺田屋は今では歴史資料館のような感じで、幕末ファンが多く集う場所です。

 お泊りも出来る宿です。


 さて、わたしは展示物を眺めていました。

 竜馬が書いた書簡が額に入れて飾られていて、それを見上げておりました。

 平日ということもあり、見学者はカレシとわたしの二人きりです。

 わたしの後ろにカレシが立って、同じように見上げている気配がありました。

「なー、竜馬の字って、いうほど汚くないよねー?」

 返事はありません。

 けれど、懐かしそうな感じで見ているのは気配で解かりました。

 返事がなかったので、わたしは振り返り。


 誰も居なかったんです。


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