エリートなあなたとの密約


過去は消せないし、元に戻れないし、戻すことも叶わない。だからこそ、今をどう生きるかで人は変われる。


私はそう信じているから大切な修平と共にこの時をしっかりと生きていきたい、と名古屋で誓ってきた。


そのうえ私たちの結婚式を通じて、怜葉ちゃんのように新たな出会いがあったことも嬉しい。


人との別れは言い表せないほど悲しい、けれど生きている限り避けては通れない道だ。そして人との出会いは日々あるからこそ、今に感謝して生きていこうと思わせてくれる。


こうして車内でのんびりしつつも、話題は振り出しに戻るかのようにかのソフィアさんへと移っていた。


「でも、あの人ほんとに真帆には優しいよ。息子は蚊帳の外だからね」

「ふふ、それは言いすぎだよ」

「まあ、ようやく娘が出来て嬉しいんだろうな。……ということで両親の東京滞在中は、父さんとふたりで自宅で留守番するから」

「ええ?ふたりで?」

「それかゴルフバーに行くかも」

「お義父さんもゴルフ好き?」

「ああ、しょっちゅう行ってる。たまに琉平も道連れらしいよ?あの肌はゴルフ焼け」

「へえ、スポーツマンなんだねぇ」

「まあ、日頃の運動不足解消らしいけどね」

「そっかー。それはうちのお父さんと気が合うはずね。お父さんもゴルフ大好きだし」

「妻に頭が上がらないとこも同じだって」

「あはは…。確かにお母さん、怒らせるとお父さんよりも怖いけどね」

「大丈夫。お袋はその斜め上を行くから」

そう微笑んだ彼いわく、黒岩家はかかあ天下とのこと。昔から男3人衆は、自由人なソフィアさんにお手上げ状態だったとか。


かかあ天下というよりは、お義父さんをはじめ男性陣が頗る優しいからだと思うのは気のせい……?


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