エリートなあなたとの密約
何度も平常心を唱える私にとって、最後尾の瑞穂をはじめとした友人や、笑顔の同僚たちの存在はとても有難いもの。
さらには、私たちの後方ですでに涙ぐんでいるのが両親二組。特に、母よりも父の方が涙もろいとは知らなかった。
またこの式に際し、甲斐甲斐しくお世話頂いた方もいて、たくさんの人々に見守られながら前へと一心に目指す。
数え切れないほどの視線を背中で真摯に受け止め、改めて私はひとりではないのだと感謝が込み上げてくる。
こうして緊張しながら歩く私は吉川姓を改め、黒岩 真帆となった。
その隣には、黒の紋付き袴姿と撫でつけた栗色ヘアとが、不思議と色香を放ち歩く男性。
それが私の旦那様となった、黒岩 修平その人である。
大名行列のようにぞろぞろと進み、ようやく本宮近くにある長床へと到着した。
選んだ大前挙式は此処で行なわれるもの。……その昔、修平と此処へよく訪れていた康太さんが見守ってくれる気がしたから。
出席者が見守る中、神職ならびに巫女さんを前にして三三九度を行う私たち。
一つめの杯を受け取る時、ダークグレイ色の瞳と目が合った。
すると穏やかにその目を細めて微笑した彼に、私も小さく笑い返す。
――ずっと緊張していたのは、やっぱりバレバレだったのね。