エリートなあなたとの密約


そのため楽しみにしていたソフィアさんとの予定も先延ばしになってしまい、僅かな余暇に都内で行なう披露宴の作業をこなすのが精一杯。


これでは折角の休日を使って名古屋からお2人が来て下さるというのに、私たち夫婦が揃って出迎えられそうにない。


ソフィアさんに素直に事情を話したところ、『時間が空いたら何時でも連絡してね。今はすべきことに集中して良いから』と優しく気遣って下さったので余計に申し訳なくなった。


そんな一件もあって、あれもこれもと焦りと気合ばかりだけが空回りし、ふとした瞬間に溜め息を吐いてしまう自身にまた落ち込んだ。


今しかないはずの甘くて楽しい新婚生活。――なぜ理想と現実の狭間で足掻いてしまうのか、と。


そうしてネガティブに陥る時は決まって、修平が出張で不在の夜のこと。日付も変わってひとり帰宅する時に感じる一抹の不安に、私は彼用のマグカップで温かいコーヒーを飲んで疲れきった体を広いベッドに投げ打っていた。


修平に早く会いたい、早く抱き締めて貰いたい、とどこか子供染みたわがままを抱きながら……。


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