エリートなあなたとの密約


再び歩み始めた彼の後ろ姿を見つめていれば、懐かしさがじわりじわりと込み上げてくる。


――さっきみたいに、私が緊張していたらワザと茶化したように笑うところもそう。


そんな当たり前のように人に手を差し出す優しい彼。でも、この地はずっと辛くて苦い場所だった。


ただのエゴかもしれないけれど、やっぱり私は今後も過去と共生して欲しいの。


康太さんはこの世にもういない。けれど今までの修平を支えていたのは、彼との日々もそのひとつであるから。


何より、これからは楽しさが以前の苦しみを凌駕(りょうが)して貰えたらと思う。


泣いたりわがまま言ったり、いつも心配ばかりかけて、まだまだ頼りない私だけれど、修平に寄り添って一緒に生きていくから。


これからもずっとずっと、笑顔のふたりで支え合っていこうね……。



そして熱田神宮で式を終えたあとは、招待客とともにホテルに向かった私と修平。


披露宴会場は、名駅と直結していて便利なマリオット・アソシア・ホテル。


東京では仕事関係と今回出席できない方を招待するため、ラフな立食パーティー仕様。

私は熱田神宮での白無垢から、人目で気に入ったローズピンクと薔薇モチーフのカクテルドレスに。


かたや修平は、光沢感のあるシルバーのタキシードへとお色直しした。


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