エリートなあなたとの密約
単純な自身をくすくすと笑いつつ、大好きな旦那さまを見つめた。
チャコール・グレーのオーダー・スーツに、ネクタイはブラウン色のバーバリーを合わせている。
今日はいつもより落ち着いた配色だけれど、それがまたダークグレイの瞳を一層際立たせているように感じるのは贔屓目のせい……?
「そりゃあ、真帆バカだもん」
あっさり放たれるこのフレーズで鼓動が速まったのはもう何度目か知れない。
それと同時に思うのは、やっぱりこの人には何年経っても敵わないということ。
渋みあるテノールの落ち着いた声は、こうしていつも何気ないひと言で心が安らぎを覚えてしまうから。
「そんなこと言われると、“修平バカ”度合いがもっとひどくなるよ?」
「それは大歓迎。ふたりで一緒に中毒になっちゃう?」
「も、もうっ!」
髪を弄ぶようにさらりと掬い、私の何十倍も甘い言葉をあっさりと返してくるため呆気なく頬が熱を帯びる。
「場所が場所だけに残念」