エリートなあなたとの密約
エリートが代名詞の上司。激務をこなす彼の安らげる場所は此処だ、と感じられる姿には嬉しさと心配が相対してしまう。
ただし、シャツからのぞく首筋から放たれる色気にはやっぱり今日も勝てないのがね……。
「……もう起きて良い?」
片目を薄く開けたと同時、いつもと変わらぬ声色の修平に、「えー、たぬき寝入り?」と小さく笑い聞き返す。
「うん。ホントは解錠音で起きてた。お帰り」
「――うん、ただいま。修平もお疲れさまでした」
「サンキュ。でもなー、真帆ちゃんにナニされるかと思って期待してたのに」
肩が凝ったと言いながら、腕を上に伸ばして軽くストレッチする姿を見られるのも特権だなと今でも思う私は、筋金入りの”修平バカ”だろう。
「……視姦で足りなかった?」
少ししたり顔で答えてみせたというのに、それを易くあしらうような面持ち。さらにダークグレイの瞳は、まるで逃すまいと真っ直ぐこちらを捉えている。
今日も負けた、といじけながら床に座り込んでいた私は不意にグッと引っ張り上げられ、落ち着く先は極上の笑みを浮かべた修平の膝上。
力強い片腕で背中をそっと支えられた刹那、お決まりの“お帰りなさい”という台詞代わりに、彼の唇にわざと音を立ててキスを落とした。