エリートなあなたとの密約
「しゅ、へっ」と、目の前の彼を呼び止めることすら叶わない。
「……こども」
ぽつりと紡がれたフレーズに、「えっ?んっ」と快楽の狭間でなんとか返す。
「子供欲しくない?」
「っ」
今が“最中”とは思えないほど、真剣な面持ちで問われた私は驚きのあまり目を丸くした。
というのも、修平はこれまで避妊を欠かさなかったから。確かにコンドームの避妊率は100%ではないとしても、出来うる限りの気遣いをしていた。
だから私も協力したくて低容量ピルを服用したこともあったが、様々な副作用に負けて続かなかったため、以降は互いに気をつけてきた経緯がある。
何より、私にとって危険日にあたる今日。……こんな時にも期待と不安が入り交じるのは、あれこれ打算する大人の分別が働くから?
「真帆は?」
ただ、あれこれと複雑な思いに駆られていても、答えはもちろん“YES”。それ以外にあり得ない。
一人っ子として育った故か、小さい頃は特に兄弟という存在には特に憧れていた。いずれ結婚したら子供はたくさん欲しいな、と幼心に夢見ていたもの。
「んんっ、あぁ、んっ」
かつて修平にはそう話したこともあるし、私の考えはきっと分かっているだろう。
それでもいま改めて思いを伝えたいのだけど、彼の唇と指先はそれを口にさせる間も与えてくれない。
「聞こえない」と小さく囁いたのち、ダークグレイの瞳を妖しく光らせて微笑を見せるからもどかしさが増すばかり。