エリートなあなたとの密約

「もう可愛い年齢じゃありません。残念ながらお仕事です」

“分かってますよね”と、じと目をするがどこ吹く風といった彼に、私はわざと溜め息を吐く。

「頑張って」と、くつくつ喉を鳴らして笑われたので挨拶を交わしてそのまま部署をあとにした。

エレベーターでまずは地上に到着。その後、専用エレベーターに乗り換えて地下駐車場を目指す。

地下に着いて足早にエレベーターを降りる。歩き進めるとすぐに定位置でレクサスを発見し、助手席側で立ち止まって待つ。

その間にスマホをチェックしようとバッグの中を探っていた時、コツコツと足早な音が辺りに響いて顔を上げる。

「悪い！」とバリトンの声音とともに、駆け足で察そうとこちらにやって来たのは修平だ。

「ううん、私もいま来たところなの。お疲れ様です」

「お疲れ」と微笑みながら言った彼は、スマートキーでロックを解除して助手席のドアを開けてくれた。

さらに乗り込む際に頭が当たらないよう、ドアの頂点付近を手で押さえながら中へ促してくれる。

「ありがとう」

「どういたしまして？」

私がシートへ乗り終えたところで、彼は茶化したように微笑して白いドアを丁寧に閉めてくれた。