エリートなあなたとの密約
何年経っても変わらない、こんな優しさに触れるたび愛しく思う。——私もまた、感謝の気持ちをずっと持ち続けていきたい。
素早く運転席に回った彼は、そのまま車に乗り込んでエンジンをスタートさせる。
大きな手でステアリングを握ると、スーッと静かな滑り出しで発車させていく。
車内には最近お気に入りのクラシックが流れ始め、その美しい音色がホッと心を和ませてくれる。
地下から地上の道路に出てすぐ私は、「で、どこに行くの?」とずっと聞きたかったひと言を放つ。
「んー、内緒」
「また言う〜」と不満を除かせると、クスクス笑うところだって昔から変わらない。
アスファルトを幾つものまばゆい光とテールランプが埋め尽くす幹線道路で赤信号になり、車が止まると顔をこちらへ向けてきた彼。
「気負う必要なんてないよ。むしろリラックスしてて?」
柔らかく綺麗な笑顔で諭されると、やっぱり弱い。それを分かっている意地悪な彼の発言で、はたと気づく。
「ん?……私も知ってる方?」
「さあ?」と、修平はニヒルな笑みをたたえながら、信号が変わって再びアクセルを踏み込んだ。
——こんな時、絶対に教えてくれないのは百も承知。そこで、話題を変えて久々の車内での会話を楽しむことにした。