エリートなあなたとの密約
ようやく部屋に足を踏み入れた私の前には怜葉ちゃん、修平の正面には高階さんという位置で席についた。
「真帆さん、今日は驚かせてすみません」
「とんでもない!驚きましたけど、その分嬉しかったから」
「私もですよ。今日は楽しみだったんです」
長くて艶のある黒髪の美しい怜葉ちゃんと笑い合う。しとやかという言葉がぴったりな女性だ。
ウエスト縛りのリボンが華やかなシルクの黒ワンピースに合わせているのは、落ち着いた色味のイエローのカーディガンで。どちらも彼女にとてもよく似合っている。
「ときちゃん、楽しめただろ?」と隣でくつくつ笑う修平の発言には、じと目を送っておく。
「修お兄ちゃん反省してる?」
私をフォローするように付け加えてくれた彼女を見ると、「だって?」と笑いながら修平に問う。
「怒った?」とバツの悪そうな表情を見せる彼に、「ふふ、サプライズありがと」と微笑み返す。
——優しいのにいたずら好きなところもまた、彼の魅力だもの。怒りどころなんて見当たらない。
そこへ、フッと落ち着いた一笑が耳に届く。私たちが揃って正面へ視線を移すと、その人物からこう言われる。
「奥さんにぞっこんというのが実証されましたね」と。