Fate
カラ〜ン♪

『いらっしゃいませー!!』

腹の底から出すこの声もだいぶ板について来た。

ナースよりこっちの方が向いてる?

ふと、そんな事を思ってしまう…

今日この頃。

『カウンターにしますか?それともテーブル席に…』

「あっ…」

「えっ…?」

「君っ…、昨日の…?」

うそっ…

あれっ?今日はスーツじゃないんだ…

ジーンズ…

「あっ、ほら、昨日の十円っ!」

いきなり私の手首を掴み手のひらに十円玉を載せてきた。

こんな店の入り口で…

ゲェ…

KYですか…?

なんだかわからないけど凄くイラッとくる。

「いーですからっ!!」

何でだろう…

自分でも嫌になるくらい感じ悪い私になっていた。

「お二人様ですか?奥のテーブルにご案内してもよろしいでしょうか?」

紺野さん…

「あっ、はい…」

紺野さんが二人を奥のテーブルに案内した。

「ちょっと、みずほー!今の何?知り合い?」

私の様子を見ていたユミが、そっと耳打ちした。

「…ぜんぜん知らない人。…」

「そっかぁ…。からまれたって我慢だよ。だって、ここは居酒屋だもん。ウチらはバイト。我慢して稼いでナンボだよ(笑)」

ごめん…ユミ。

自分でも良くわかんない。最近、どうでもいいことで…凄くイライラしたり…

自分でも止められなくて…

あの人は…

昨日の夜、コンビニでちょっと顔を合わせただけ…の

ぜんぜん知らない人、だよ……。




< 5 / 12 >

この作品をシェア

pagetop