禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「待て!旗は渡さないわよ!!」
聖堂から出ていこうとする黒龍団の兵士をアンは追おうとしたが、最後尾にいた兵士が咄嗟にへたりこんでいたサラをガバッと腕に捕らえた。
「この姉ちゃんの首を落とされたく無かったら動くんじゃねえ」
首に剣を当てられガタガタと震えるサラに、アンは駆け出していた足を止めた。
兵士は旗を持った者が聖堂から出ていったのを見届けてからサラを離し、自分も後を追って駆けていった。
ヘナヘナと再び床にへたりこんだサラが涙目でアンを見上げる。
「も、申し訳ありません、アンさまぁ」
「いいのよ、旗は取り戻せばいいのだから。それよりサラが無事で良かった」
足に力の入らなくなったサラをアンは手を取って立たせた。
黒龍団の退いた聖堂には生き残ったデュークワーズの数人の兵士と敵味方幾つもの死体と血飛沫が散乱するだけだった。
血生臭く静まり返った聖堂で、リヲは自分の剣を鞘に収めるとアンを振り返って言った。