禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「…怪我は無いか?」
そう聞いたリヲの声は普段の威圧的なものではなく、少し怯えを含んでいた。
「大丈夫。助けてくれてありがとう…兄さん」
素直に述べたアンを見る瞳は安堵に満ちていたが、アイスリットの奥のそれを彼女が見ることは出来なかった。
けれど、歩き出したリヲがアンの横を通り過ぎるとき
「…なら、良かった」
小さく言った言葉は、兜越しで微かにしか聞き取れなかったけれど、それは確実に彼女の胸を熱くした。