禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
同時刻。
デュークワーズ城、王宮の間。
部屋にはいつものように豪奢な燭台に仄かな灯りのみが着けられていて、ヴィレーネ女王とその護衛のリヲの二人きりだった。
ただいつもと違うのは。リヲは玉座の脇に控えるのではなく、女王の足元に膝まづいて頭を垂れていた。
「申し訳ありません。女王陛下」
「…もういいわ。頭を上げなさい」
此度の戦いに於いて、リヲの武勲は称賛に値するものの筈であった。けれど、彼はそれ以上に犯してはならぬ失敗を君主に咎められていた。
「リヲ。最後にもう一度言います。
今後どんな事があっても貴女は私の側を離れてはなりません。いいですね」
リヲは女王特別任命の護衛兵士であるにも関わらず、戦いの最中その任を離れた。
いくら敵の狙いが女王ではないとは言え、城に敵が攻めこんでる最中に主の元を離れ聖堂に加勢に行ってしまったのだ。
結果的にそれはこの戦争を有利な形で納める事が出来たが、けれど掟は掟だ。
リヲは騎士としての忠誠を破ると云う最大の禁忌を犯したのだ。