禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
リヲは静まり返っている聖旗の塔を歩き続け最上階の展望室まで来ると歩みを止めた。
吹き抜けの窓から強い風が流れ込んでいる。月明かりに照らされて金と銀の髪が靡いていた。
笛のような風の吹き抜ける音と森の揺れる葉擦れのざわめき。自然の音しかしない薄闇の中で二人は無言で立っていた。
月影に縁取られるリヲの顔を、アンはじっと見つめた。
幼少の頃から変わらない、端正で、けど淋しげな横顔。
「……兄さん…」
ぽつりとアンが呼んだ事に、リヲは伏せていた目を上げアンの方を向いた。