禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「…軍議で聖乙女の処遇が決まった。
次にギルブルクの進攻があった際、聖乙女は街はずれの教会にて敵を迎え撃つ。その際、軍隊は教会を中心に配備させる予定だ」
リヲの告げた処遇と作戦は冷酷なものだった。
「それはつまり…城から離れた場所でギルブルクを引き付ける為の囮になれと言うことね」
軍議は、伝統と自分の安全を重んじる旧守派の大臣らが中心になって行われた。
彼らが何より守りたいものは自らの立場とそれを支える王家の体裁なのだ。しょせん女風情の騎士がどうなろうと知ったことでは無い。死んだら次の聖乙女を立てればいいのだ。
王家最後の血を引くヴィレーネと国家の基盤たる城さえ無事なら、彼等にとってむしろアンに狙いが定まってくれるのはありがたい事であった。
…おそらく、そうなるだろうとアンに予感はあった。
自分が囮になって女王が守れるのならそれでいい。国に、主に命を捧げ守る為に騎士になったのだから。
「分かりました」
アンは強い決意を籠めて返事をした。ただ。
「聖乙女には近衛に第二騎士団の歩兵第一部隊を着ける。それ以外は第三騎士団が配備に着く」
そう告げたリヲの言葉にアンは密かに眉を潜めた。
「…第一騎士団は…」
「第一騎士団は城と砦の警護にあたる」