禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
自室に戻ったリヲを待ち構えていたのは不機嫌な顔をしたミシュラだった。
そばかすの乗った鼻に皺を寄せて、帰ってきたリヲを睨み付けている。
「…何か用か」
そんなミシュラを軽く一瞥してリヲは自室の椅子に座った。
「聞いたよ、軍議の報告。信じられないほど人でなしな作戦だね」
いつもおどけているミシュラにしては珍しいほど攻撃的な口調だった。だがリヲは無言で机に向かい何も答えない。
「アンを町外れに追いやって囮にしたうえ第一騎士団の護衛を着けないだって?
君が軍議に出ておきながらどうしてそんな酷い作戦を認めたんだ!」
ドン!とミシュラがリヲの向かってる机を叩いた。
「これが一番城と陛下をお守り出来る作戦だ。それに予め迎撃の準備が出来る分、勝率は高い」
「陛下さえ守れれば何を犠牲にしてもいいのか!?」
激しい剣幕で責め立てるミシュラに、リヲも険しい表情で答え返した。
「甘えるな!我々は王国の騎士だ!!何に変えても王家の血を守るのが宿命だ!
それにアンも騎士だ、自分の命を以てして陛下を守る事が出来るなら本望のはずだ」
「…君は…何も分かっちゃいない…」
リヲの冷酷さに、ミシュラは悲痛な表情を浮かべて頭を振った。