禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
子が出来ぬまま高齢になったミルト=ディオ=ガーディナーが、跡継ぎとして養子に迎えたのは沼の国の漆黒の髪の子だと、周囲は俺をあまり歓迎しなかった。
その心無い評判に俺は危惧した。
せっかく家族になってくれた父がやはり俺などいらないと言い出すのでは無いかと。
見捨てられぬよう、幼い身で俺は父の期待に全身全霊で応えた。“黒い子”でも愛してもらえるようにと。
けれど、そんな努力を嘲笑うように戦慄する出来事がある日訪れる。
『奥様がご懐妊されたそうよ。これで本当のガーディナー家の跡継ぎが出来るわね』
屋敷の端女の噂話に体が震えた。
本当の子供が出来たら俺はもう必要無いのか?また孤児に戻されるのか?
母の懐妊を知ってから赤ん坊が産まれる日まで、生きた心地がしなかった。