禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
産まれた子供は待望の男児では無く女児だった。
良かった。女なら騎士にはなれない。それなら跡継ぎはやっぱり俺になる。
そう安堵したのも束の間。
『ガーディナー家の子である以上、アンにも剣を握らせる』
父はそう宣言した。
その日から金の髪を持つ赤ん坊は 、ガーディナー家の家督を奪う驚異の存在として、俺の瞳に映るようになった。
俺は、アンに冷たかった。
彼女は愛すべき妹では無くライバルだった。養子の俺と女のアン。どちらがガーディナー家の跡継ぎになるかは剣の腕次第だった。
けれど、躍起になって剣の鍛練をするだけの俺と対照的にアンは朗らかで皆に愛されていた。
生まれついての美しい金色の髪。誰にでも屈託ない人懐っこい性格。よく笑うあどけない笑顔。
全て自分が持っていないものを彼女は有していた。
悔しかった。憎かった。
俺に無いものを沢山持っている上にガーディナー家の跡継ぎまで俺から奪おうとしているアンが。
『リヲ、剣の稽古もいいけどたまにはアンと遊んであげて。貴方の妹なのよ』
母にそう咎められても、俺に彼女に優しくする余裕は無かった。