禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
『ずーっとずーっと、にいさんと一緒にいるの』
その言葉に、少年だった俺は何を思ったんだろう。
いや、何も思わなかった。思えなかった。
ただ、ずっと渦巻いていたずっと溜め込んでいた感情が爆発した事しか覚えていない。
憎くて、恐ろしくて。けれど
誰より愛しくて。
俺は妹に…アンに恋をしていたんだと。彼女の華奢な体を夢中で抱きしめて思い知った。
『…にいさん?』
突然抱きしめられて驚いているアンの、戸惑う声が森の葉擦れと重なって聴こえる。
濃翠の世界は夢と現の狭間のようで、草木の薫るこの場所で腕に抱きすくめたアンは太陽の子のような気がした。
「……アン……」
ずっと撫でたかった黄金の髪に指を絡めた。
眩しい。眩しいほど憧れで、羨望で、驚異で――憎く、愛おしい。
不安に揺れる翡翠の瞳に俺を映すアンに、そっと唇を重ねた。