禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「ミシュラが護衛に着いてくれるの?」
思いもよらなかった報せに、アンは驚きの声をあげた。
黙ってニッコリと頷いたミシュラに、アンも表情を綻ばせる。
「良かった…!第二騎士団を信じてないわけじゃないけど…でもやっぱりミシュラがいてくれたら心強いわ」
心から安堵した様子でアンはポスッと自室のベッドへ腰かけた。
いくら隣の部屋にサラが控えてるとは云え、夜更けの時間に自室で男と二人きりでいるのに無防備に寝床へ座ってしまうアンに、ミシュラはこっそり苦笑する。
そんな、男の思惑など気付きもせずにアンは嬉しそうに礼を述べた。
「ありがとう、ミシュラ」
「いやいや。言っちゃ悪いが第二騎士団に黒龍団の相手が勤まるとは思えないからね。
それに…黒龍団将軍ヨーク。僕は見てないけどとんでもなく強いんだろう?」
不穏な名前が出た事に、綻んでいたアンの顔が引き締まった。
「…ええ。魔法だけじゃない、剣の腕も相当たつわ。
けど、次の戦いに来る可能性は低いんじゃないかしら」
「普通に考えればね。片腕を落とされたんだ、戦線復帰は無理だろう。けど」
「けど?」
「奴は普通じゃないじゃかも知れない」
難しい顔をして腕を組み、ギシリと音をたててミシュラも向かい側の椅子に座った。