禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「こないだ聖旗や聖乙女の事を調べたろう?けど結局何も分からなかったから、僕は逆にギルブルクの事を調べてみたんだ。そうしたらちょっと面白い事が分かったよ」
真剣な表情で言ったミシュラの話に、アンも身を乗り出して耳を傾けた。
「黒龍団将軍ヨーク=レストログ。彼の出身は騎士でも無ければ傭兵でもない。彼は元は学者だったんだ」
「学者!?」
信じられない敵将の経歴に、アンは夜更けと云うことも忘れて声をあげて聞き返してしまった。
「そう。それが突然5年前に将軍の地位と黒龍団を与えられている。何の武勲も爵位も無い男に、だ」
「信じられない…!だって、あの強さで剣の鍛練を受けて来なかったっていうの?」
「ああ。全く解せない話だよ。しかも、ギルブルクがデュークワーズの進攻を始めたのはその直後なんだ」
「…………」
話をするミシュラとそれを聞くアンの中で、点と線が繋がり胸に暗雲が立ち込める。