禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
無意識に自分の体を両手で抱きしめたアンに、ミシュラは立ち上がって安心させるように肩に手を置いた。
「大丈夫だよ、アン。君を拐わせたりはしない。そのために僕が護衛に着くんだから」
さっきまでの険しい顔をふわりと綻ばせミシュラは目一杯優しい表情をして見せる。
それは得体の知れない敵と対峙しなくてはならないアンにとって頼もしいものであった。
「ありがとう、ミシュラ…。
でも、私に着いてしまって第一騎士団の方はいいの?副長は陛下に着いてる兄さんに代わって全軍の指揮を任されてるんじゃ?」
ミシュラの申し出はこの上なくありがたいが、果たしてあれだけ厳しい事を言ったリヲが何故これを許したのか。アンの胸には疑問と…兄がやはり自分を心配してくれたのではないかと淡い期待が過る。すると。
「ああ。僕、第一騎士団の副長辞めたんだ」
「……ぇえっ!!?」
信じられない事をケロリと言ったミシュラに、アンは自分の耳を疑った。
冗談で無ければさっきの話よりある意味衝撃だ。