禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「う、嘘でしょう?」
「まあ、正式な処分は戦いが終わった後にリヲが下すだろうけどね。団長命令を無視したんだから除隊は免れられないかな」
ケロッとした顔で話すミシュラにアンは目を真ん丸くした後、段々と困惑の表情を浮かべた。
「だ…ダメよ、そんなの!ミシュラは誇りある陛下直属の第一騎士団副長なのよ!それなのにこんな勝手な事をして除隊だなんて…」
アンの言葉に、ミシュラは眉を八の字に下げてクスッと笑う。
「さすが兄妹だねえ、リヲと同じような事言って」
「笑い事じゃないわ!」
困惑が過ぎて、アンは思わずベッドから立ち上がった。
けれどミシュラの方はいたって冷静だ。そんなアンをまっすぐ見つめ口を開く。
「アン。確かに僕は王家に、国に忠誠を誓った身だよ。けれどね。国を守る為に細腕で最強の敵に立ち向かった女の子を囮にして、平気で見殺しにするような国家に仕え続ける。そんな人でなしな心は生憎持っていないんだ」
「………」
真摯な瞳で語られたミシュラの言葉に、アンは戸惑いながら口をつぐんだ。
「騎士の誇りより、副長の地位より、僕には守りたいものがある」
ミシュラの投げる真っ直ぐな視線に堪えられず、アンは俯いてしまった。