禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「……けど…私のせいで、ミシュラが除隊だなんて…」
さっきまでの安堵を凌駕する申し訳なさに顔を上げられなくなったアンに、ミシュラは立ち上がって両手を肩に置くとおどけた表情で顔を覗き込んだ。
「んもう、違うよアン。ここはね、嬉し泣きをしながら『私のためにそこまでしてくれるなんて』って言うのが正しい女の子の反応だよ」
「え?」
突然おどけたミシュラの台詞に、アンは顔を上げて目をしばたかせる。
それを見てニッコリ笑ったミシュラは
「そうすれば僕だって抱きしめてあげやすいのに」
そう言葉を続けた。
アンはそれを聞いてポカンと口を開いている。
「鈍いなあ、アン。まだ分からないかい?
僕はね、ただの親友の妹のために副長の地位を捨てられるほど無欲でも善人でも無いよ。
アン。君だから、僕は躊躇なくそれが出来るんだ」
アンの両肩に置かれた手に、ぎゅっと力が籠められた。
濃海色の瞳は真っ直ぐに勿忘草色の瞳を映してる。
「アン。僕は君を愛してるんだ」
熱く紡がれた言の葉が、静かな夜更けの部屋に落ちた。