禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
アンの突如の反論に、ミシュラは抑えつけていた感情を露に声を荒げた。
「目を覚ませ、アン!!リヲは君の兄だ!結ばれる筈がないだろう!それに、彼が君を見捨てた事に理由なんか無い!第一騎士団長の地位が惜しくて陛下に反論出来なかっただけだ!」
「やめて!違うわ!!兄さんはそんな人じゃない!」
「違うものか!妹の命より自分の立場を取った臆病者だ!」
ミシュラがそう怒鳴った次の瞬間、部屋にパンっと乾いた音が響いた。
頬の痺れと、目の前の瞳を潤ませたアンを見て、彼女に平手を喰らったのだとミシュラは一瞬の後に理解した。
「……これ以上言ったら…例え貴方でも許さない…!」
キッと睨み付けた瞳からは、スゥっと一筋の涙が輪郭に沿って落ちていった。
それは、この城に来てから初めて彼女が見せた涙だった。
どんなにリヲにきつく当たられようと、どんなに厳しい訓練を課せられようと、恐ろしい敵と対峙した時でさえ気丈にして見せなかった涙を、アンは今ここで初めて流した。
―――兄の名誉を傷付けられて。
その事実に、ミシュラの感情が理性を上回る。
ミシュラは自分の頬を払ったアンの右腕を掴むとそのまま体を押し倒し、彼女の裏のベッドへと強く押し付けた。
「きゃ…!!」
突然視界が反転して何が起きたか理解できないアンに、ミシュラは彼女の体を抑えたまま唇を奪った。