禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「……!!!」
何をされているのか頭が理解するよりも早く、反射的にアンは逃れようとした。
けれど、強く抑えられた手首はびくともしない。
女としての本能が全身に危機を訴えている。
「…いや…!止めて!離して…っ」
顔を背けてミシュラの唇から逃れたアンは必死に訴えるが、それは何の意味も持たない。
ミシュラは背けたアンの頬に首筋に何度もキスを落とし、自分の体重を掛けてアンの体に重なると完全に抵抗を封じた。
「いやっ!!止めてミシュラ!お願い離して!!」
捕らえられた体がびくとも動かない事に、アンは自分が非力な女である事を痛感する。
どんなに鍛えようと努力しようと、剣を置けば自分はただの弱い女なのだと云う悲しい事実に涙が止まらない。
「いや…!いやだぁっ!!助けて…!兄さん、助けて…!!」
幼子のように泣きじゃくりながら訴えた助けに、ミシュラはギリ、と唇を強く噛んだ。
「いい加減にするんだ!ヤツは兄だぞ!!どうして…どうしてよりにもよって
リヲなんだ!!」
他の男ならまだ諦めもついたかも知れない。
けれど、何故。それだけは解せない。許せない。
アンを真剣に愛してるからこそ、余計に。