禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「……アン。まだ間に合う。今すぐその想いを消すんだ。
君は僕が幸せにする。誰より愛してみせる。だから…」
「……い…、や……いやだ…っ…!……兄さん……助けて、兄さん……っ」
普段決して見せない無防備でグシャグシャな泣き顔で、アンは必死に兄を呼んだ。
その姿はどんな抵抗よりも頑なに他の男を拒むもので、ミシュラは顔を歪めて奥歯を噛みしめる。
シーツに広がる金の髪。涙を乗せて麗しく輝く深翠の瞳。濡れた花弁色の唇。自分の体の下で大きく上下する豊かな胸。鍛えられ引き締まっても尚柔らかさと丸みを帯びた身体。
これほどまでに完璧な“女”を作りながら、神は何故過った魂を入れたのか。
何故彼女は男に愛される真っ当な喜びを受け入れない道を選んでしまったのか。
禁忌に焦がれる女になってしまったのか。
ミシュラは、それが悔しくてたまらない。
「…アン…僕は…僕は……」
ならばいっそ。その純潔を奪えば。
聖乙女の純潔を奪うと云う禁忌を犯せば。
―――共に地獄へ堕ちるのは、僕だ。
罪を覚悟したミシュラがごくりと唾を飲み込んだ。
その時。