禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「なっ何をしているんですか!!?」
背後の扉が開いたと同時にサラの大声が部屋に響いた。
「いやに騒がしいと思ったら…!ミシュラ様!お止め下さい!!アン様から離れて!!」
駆け込んで来たサラが、アンに覆い被さってるミシュラを無理矢理引き剥がす。
涙でいっぱいのアンの顔を見てサラは叫ぶ声にさらに怒りを滲ませた。
「…!!ミシュラ様!見損ないましたわ!!貴方、自分が何をしてるか分かってらっしゃるの!?アン様は聖乙女なのよ!それを無理矢理こんな…!!」
突然の邪魔とサラの剣幕に、ミシュラは驚きの表情のままベッドから身を引く。
「サラ…私は大丈夫だから……」
起き上がったアンは自分を背に庇ってるサラの腕をそっと引いたが、サラの興奮は収まらない。
「大丈夫じゃありません!!こんな…こんな…!
……酷いわ、アン様はまだお若い女の身で頑張ってられるのに……どうして国もリヲ様もミシュラ様まで、アン様に優しくしてさしあげないの……」
ついにサラは、アンを庇いながらさめざめと泣き出した。
試練ばかり合うこの年若い女団長が可哀想で。
シクシクと泣き続けるサラに、すっかり気を削がれたミシュラはふうっと大きくため息を吐き出した。
「……すまなかった、アン。謝るよ。
けど、僕の君への想いは嘘じゃない。それだけは分かってくれ」
最後にアンを見つめてそう言うと、ミシュラはくるりと背を向け部屋から静かに出ていった。
アンはその言葉を受け止めぎゅっと唇を噛みしめると、乱れた衣服を直して泣いているサラを抱きしめた。
「…庇ってくれてありがとう、サラ。私は大丈夫よ。貴女がそうやって味方でいてくれるなら、私は傷付いたって立ち直れるから」
さっきまで怯えた表情で涙を零していたのに、今はサラを安心させようと気丈に優しく振る舞うアンの姿に、サラはますます悲しくなる。
嗚呼、アン様。
なんて誇り高く可哀想な女(ひと)。
せめて私がもっと強かったら、貴女を守ってさしあげられるのに。
自分より年若く小柄な少女の胸に抱かれながら、サラは自分の不甲斐なさに泣いた。
神様、どうかこの健気な少女に祝福をと。泣きながら祈った。
けれど。泣き続けるサラの髪を撫でながらアンが想うのはただ一人、誰より彼女を禁忌の渦中に陥れる銀の髪の男だけだった。