禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「おお、いたいた」
まるで探していた猫でも見つけたような口ぶりで入ってきた黒い鎧を見て、そこにいたデュークワーズの兵は皆戦慄する。
「……ヨーク将軍…!!」
ミシュラの読みは的中した。
片腕を落とされた筈のヨークは、まるで何事も無かったかのように復活していた。しかも
「…!?腕が!?」
失ったはずの左腕は前とまったく変わらぬ様子で手甲に包まれ自在に動いている。
その信じがたい現実を目の当たりにして、デュークワーズの兵達の背中に恐怖が駆け上る。
それは、ミシュラやアンとて同じだった。
いや。予測していた分、尚その不気味さに魂が戦慄く。
―――人間じゃない。化物だ。今、目の前にいるのは。
ヨークと対峙する全ての兵がそう感じた。
生き物の本能で体が震える。兜の下の額には皆汗を浮かべ、足がすくむ。
―――けれど、
退くわけにはいかない。
騎士としての誇りが兵達の足元を細く、けれど強く、支えていた。
「…例え命尽きようと、聖乙女を…アンを守る…!」
自分に誓うように呟いたミシュラの一言に、兵達の胸に抱いた勇気が堰を切ったように溢れだした。
「うおおおおおおおっっ!!!」
教会の戦いは、デュークワーズの騎士達の一斉攻撃で幕を開けた。