禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「この国のNo2って所か。俺の相手としては不足ねえな」
そう言ってヨークは剣を持った右手をミシュラに向かって構えた。
「…けどよ、俺は剣の勝負をしに来たワケじゃねえんだ。どきな!!」
黒い将軍はそう吼えると剣を引いて黒い炎の渦巻く左手を突き出した。
ゴォォッ!!と唸りをあげて龍のような炎がミシュラにまっすぐ飛び掛かる。
――……!!
刹那。
炎の龍より速く、ミシュラは横に飛んだ。
この攻撃が来ると読んでいたミシュラだから、アンの素早ささえ見切れる眼の良さを持つミシュラだから、動けた速さだった。
「何っ…!?」
そして、避けたミシュラの背後から同時に白い鎧が飛び出すのを、ヨークは見た。
ガキィィン!!と白銀の刃がヨークの剣と火花を散らす。
予測してなかったミシュラとアンの動きに、咄嗟に右手だけで剣を持ち防いだヨークの体勢が大きく崩れる。
「ぐっ…!!」
その隙を一秒も逃すまいと、ミシュラの剣が華麗にヨークの左手を突き刺した。
ミシュラは知っていた。
戦いの後、アンに聞いた“黒い炎の弱点”を。