禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
ゴンッ、と低い音をたてて
首は木の床に転がった。
真っ赤な血を噴き出しながら、サラの頭と体は離れ離れになった。
アンの純白の鎧にまるで薔薇の花弁のようにそれはまとっていった。
「………………サラ……………………」
アンの瞳が、信じられないものを見る眼差しでそれを映す。
兜の隙間から、サラの橡色の髪が零れるのが見えた。
やがてそれもすぐに血の赤に染められていく。
「……あ…あ、あああああ………」
アンの全身が戦慄いた。
込み上げてくる絶望に飲み込まれていく。
「くそアマが…!くだらねえ事しやがって、また使えなくなっちまったじゃねえか!」
指を失った左手を見て、ヨークが忌々しげに吐き捨てる。
「まあいい。俺が剣で直々に腕を落としてやるぜ。それとも戦う気も無くなっちまったか?」
血溜まりに震えて立ち尽くすアンを見て、ヨークはニヤリと笑った。
「まあいい。後で暴れられても面倒だ、落としておくか」
微動だにしないアンに向かって、ヨークは容赦無く剣を構えた。
「アン!!」
それを見たミシュラが叫ぶ。
けれども立ち尽くしたままのアンに、ヨークは再び口角を歪め笑うと右手で大きく剣を振り上げた。
そして、ヨークの右手が鈍く光る刃を降ろした瞬間。
「―――…………………あ゛…?」
アンの白銀の刃が、誰の目にも止まらない速さでヨークの喉元を貫いた。