禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~



ゼエ、ゼエと、アンは肩で息をしていた。

ギルブルクの兵が完全に撤退したのを見届けてミシュラがアンに駆け寄る。

「アン…大丈夫かい?」

ミシュラは今にも崩れ落ちそうなアンを抱き留めながら、返り血に染まった兜を外した。

バサリと金の髪が流れて、汗まみれの美しい顔が現れる。けれどその顔は茫然としていて何の表情も浮かべていない。

「…アン………」

ミシュラは汗で額にへばりついたアンの前髪を指で除けてやった。

アンは乱れる息を苦しそうに繰り返しながら、やがてフラフラと歩いて行った。

そうして血溜まりの真ん中に座り込むと、自分を守ってくれた忠実な部下の首を抱きしめた。

ドロリとした血に濡れた兜を外し、よく見知った素朴で優しい友の首を。

静まり返った教会の祭壇の前で。

アンは抱きしめて、咆哮した。





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