禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
何千万の民草の希望を、どうして死なす事が出来ようか。
何千年の歴史を、どうして消す事が出来ようか。
ただ一人、それを繋ぐ女を守る事。
それが、デュークワーズの守護騎士・リヲ=ガーディナーに課せられた運命か。
ヴィレーネはふっと瞳を閉じ、深く息をした。これからの運命を受け入れる為に。
そうしてゆっくりと瑠璃色の瞳を開くと
「分かりました。私はこの身を隠します」
そう、皆に向かって宣言した。
受け継がれて来た真鍮とビロードの玉座には、デュークワーズ王家の誇りが染み付いている。
時代の波を潜り抜けてきた荘厳な城には、永く雄大な歴史が刻み込まれている。
それらを守れなかった事が、自分の代で潰える事が、どれだけ重く若き女王にのし掛かるだろうか。
いっそ共に朽ち果てられたらどれだけ楽か。
けれど、自分は最後の希望なのだと。
ヴィレーネ=シュ=ルナ=デュークワーズは過酷な運命を受け入れる。
「今夜中に城を抜け国境を越えます。急いで手引きの支度を」
若く美しい女王は凛々しく気高く、そう叫んだ。