禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「…アン…少しは休まないと駄目だ」
ミシュラは自分の不甲斐なさに眉を潜めて言った。
日が落ち静寂に包まれた教会の礼拝堂で、アンは長椅子に横たわらせたサラの遺体の前にずっと踞っている。
補給部隊の持ってきてくれた食事も水も口にせず、血に濡れた手を拭う事も無いまま、ただずっと。
「アン。まだ戦いは終わったわけじゃ無いんだ。夜が明ければまたギルブルクは君を狙ってやってくる。再び戦闘に備えて今は少しでも体を休めなきゃダメだ」
しかしミシュラが何度説得してもアンが従う事は無かった。
強引に腕を引いてもアンはそれを振り払う。
ミシュラは自分の言葉がアンに届かない事が歯痒くてたまらなかった。