禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
「…アン…。俺はこれから陛下を脱国させる」
「!!」
突然のリヲの言葉にアンが大きく目を見開いた。
「重臣達との話し合いで陛下を国外へ逃亡させる事が決まった。
このままでは我が国は制圧されるだけではなく王家の血も絶やされ兼ねない。それだけは何としても避けねばならん。
俺は陛下の護衛として最後まで着き従う」
ようやく生気を取り戻し掛けていたアンの顔が再び蒼白に染まる。
「……それじゃあ…兄さんは……」
「………しばしの別れだ」
吐き出された言葉に、アンは我を忘れ大声で叫んだ。
「嫌!!そんなの…兄さんと離れるなんて!もう会えないかも知れないなんて!!絶対に嫌!!」
「アン、落ち着け」
「嫌!嫌!!お願い兄さん!行かないで!」
「弁えるんだ。お前も騎士なら命令に殉じろ」
「私は…私が命を賭して戦うのは!騎士になったのは!みんな貴方の側にいるためよ!!」
悲痛に叫んだアンの言葉に、リヲの表情が固まった。